「当事者中心の多様な包括的支援に向けて」シンポジウムの報告

 9月4日は、性の健康世界学会が2010年に制定した「世界性の健康デー」です。

 今年の「世界性の健康デー」シンポジウムin山梨では、「当事者中心の多様な包括的支援に向けて」が

テーマでした。

 来年4月1日に「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が施行されます。「女性支援新法」の意義、新たな女性支援の強化について、34名の参加者とともに議論しました。

 コーディネーターに伏見正江さん(女性ヘルスエンパワメントネット代表・山梨県立大学名誉教授)をお迎えし、パネリストは、佐々木由紀さん(元やまなし性暴力被害者支援センター センター長)、佐藤久子さん(女性相談所 所長)、女性の人権サポート・くろーばーさん、望月理子(エンパワメントアフロッキー)の4人でした。

 「女性支援新法」の目的・基本理念は「女性の福祉」「人権の尊重や擁護」「男女平等」を明確に規定しています。国や地方公共団体には、困難な問題を抱える女性への支援に必要な施策を講じる責務があります。

 女性相談所は、女性相談支援センターに、婦人相談員は、女性相談支援員に、婦人保護施設は、女性自立施設になります。これまでの「保護更生」という考えではなくて、女性の人権を保障する女性福祉の構築をめざし、当事者の意思が尊重されて、民間団体等との対等な協働による「多様な包括的支援の提供」が実現されることが明記されました。

 女性が直面する困難は、社会構造によるものであり、決して自己責任にすり替えてはならないという認識から、支援は公的責任であり、年代、国籍、障がいの有無、職業や社会的経験、文化的背景等をとわないものとなりました。

 パネリストの話の中で、当事者中心の多様な包括的支援に至っていないさまざまな現状が明らかになりました。行政サービスの全容が当事者にも支援者にもわかりにくいシステム、当事者やその家族が安心して休めて、これからをじっくり考えることのできる場所の確保が不十分であること、回復に向かう長い時間に寄り添う専門的な知識をもった職員(相談員支援員等)の養成や確保の難しさ、公的資金がすぐに使えるものになっていないこと等の経済的支援の厳しさ、人権やジェンダー平等の研修が浸透していないこと、民間団体を支援する人的・経済的な仕組みが乏しいこと、子どもの4人に1人が性的暴力を受けている実態等への認識不足、人権教育や包括的性教育が進まない状況等々です。

 後半の参加者との意見交換では、新法へ理解が進んだことや、県が立てている基本計画に、こうした課題を乗り越える施策が盛り込まれることを期待する声が多数あがりました。

 「今日のことを周りに伝え、ジェンダーの視点から考えられるように意識を変えていきたい」「正規職員が必要だと思う」「当事者の人権尊重を考えながらつながりを広げていきたい」「自分の立場でできることをしっかりやっていきたい」「被害者支援のために人材確保、経済的支援が必要なことを行政に理解してほしい」等々の感想をいただきました。

 「当事者中心の多様な包括的支援に向けて」、私たちは、これからも活動を進めていきたいと思います。皆様のご支援とご協力に感謝しています。